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「読まなくていいから買ってくれ」と言える強さ

私の好きな漫画家(兼コラムニスト)に、カレー沢薫という人がいる。
自身の作品の単行本について「読まなくていいから買ってくれ」と言うタイプの漫画家だ。(そんなタイプがあるのかは知らない)


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他にも「読まなくていいからアンケート出してくれ」(雑誌の連載)、「読まなくていいからアクセスしてくれ」(webでのコラム連載)などのバリエーションがある。

せっかく自分が描いた漫画を読まなくてもいいだなんて漫画家としてあるまじき発言のようにも聞こえるが、趣味道楽として漫画を描いているならさておき、漫画家を生業としている人としてこれを言えるのは強いと思う。
(以前は会社勤めをしながら漫画を描いている兼業漫画家だったカレー沢先生だが、現在は会社を辞められ、晴れて?専業漫画家兼コラムニストとなった)


ある漫画の単行本が発売されたという時、私たちがそれに対して取る行動というのは、以下の四つのどれかになると思う。

 読む  読まない
買う   A   B
買わない   C   D


A:買って読む
B:買って読まない
C:買わずに読む
D:買わないし読まない


カレー沢先生の「読まなくていいから買ってくれ」というのは、Bを求める発言ということになる。

漫画家にとって一番嬉しい行動がAであるのは間違いないと思う。
Dを求める人というのはまずいないはずだ。

しかし、Twitter等のSNSで自身の単行本の発売を宣伝する時「買って読んでください」という言い回しはなかなかしづらいのではないかと思う。
(と思ったけれどTwitterで検索してみたらわりと見受けられた)
(わりと見受けられたが比較的言いづらい言い回しという体で話を進める)


「買って読んでください」という言い回しには、2つの要求が含まれる。
奥ゆかしい日本人のことだから、2つも要求するだなんて出来ない!という場合、2つの要求のうちどちらか1つを削れば、多少言いやすくなるのではないかと思う。
「買ってください」か「読んでください」のどちらかのみなら、「買って読んでください」よりくどくなく、比較的言いやすいように思える。

しかし漫画家がそれぞれの言い回しを使う時、一見要求は1つだが、実際意味するのは「買って(読んで)ください」であり、「(買って)読んでください」であり、どちらもAの要求である。
「買ってください」には「読まなくていい」という意味は含まれないし、「読んでください」には「買わなくていい」という意味は含まれていない。
BやCの要求のように見えなくもない言い回しで、その実Aの行動を切に願っているはずだ。

だからこそ、「読まなくていいから買ってくれ」とBの行動を要求出来るカレー沢先生は強いと思う。
「買ってください」「読んでください」とAをほのめかす言い回しではなく、「読まなくていいから買ってくれ」と、はっきりとnot A but Bの姿勢を示しているのだ。

漫画家である以上自分の作品を読んでは欲しいはずだが、それが仕事である以上買ってもらわないことには収入に繋がらない。
「買ってください」というのは言ってみれば金銭の要求であり、ともすると守銭奴のように見られそうで「読んでください」という要求に逃げる人もいると思う。
カレー沢先生は、要求を「買ってくれ」という一点に絞り、読んでもらうことを切り捨てるという漫画家らしからぬ潔さでそれを言ってのけるからすごい。


さらにカレー沢先生は、「読まなくていいから買ってくれ」にとどまらず、自身の単行本を「買って燃やしてくれ」とまで言い出すタイプの漫画家である。


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なぜ燃やさなくてはいけないのか、と思う人もいるかもしれないが、燃やす理由は簡単だ。
買った単行本が燃えてなくなれは、また買う理由になる。
それだけだ。
ただただ「買ってくれ」という要求に絞っているからこそ出る発言である。


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このように「買って燃やしてまた買ってくれ」という言い回しで使われると、燃やす理由が明確に伝わると思う。

ふざけているように聞こえるかもしれないが、漫画家を生業としている者にとっては笑い飛ばせる話でもないと思う。
漫画家にとって自身の単行本を繰り返し繰り返しボロボロになるまで読まれることは嬉しいことかもしれないが、それよりも買った漫画を燃やしては買い燃やしては買いされる方が単行本の部数は伸びる。


「読まなくていい」も「買って燃やせ」も、漫画家が自身の作品に対して言うのは決して低いハードルではないと思う。
それをさらっと言ってのけるのはカレー沢先生のキャラのなせるところもあるかと思う。

そして「読まなくていい」とは言われているが、「読んではいけない」とは言われていないので、実際のところファンは単行本を買って読んでいる。
カレー沢先生自身は読まなくていい読まなくていいと言っているが、内容が面白ければ、読まなくていいと言われても人は読むのだ。
読まなくていいと言われると逆に読みたくなるという人もいるだろう。

カレー沢先生は本当にいつも徹底して「読まなくていいから買ってくれ」と言い続けて来たし、これからも言い続けると思う。
それは確かにカレー沢先生の漫画家としての強みのひとつだと思うので、是非そのスタイルを貫いてほしい。


カレー沢先生が「読まなくていいから買ってくれ」と言い続けていることについてすごいなとは常々思っていたが、推しが「買ってね」と言うCMを観たのをきっかけに「買ってくれ」と直接的に要求する販促についてまとめてみた次第である。
どんな人も、もっと気軽に「買ってくれ」と言ってみてもいいのかもしれない。
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