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サインガチャという書店販売サイン本の新たな形

漫画や小説、エッセイなどの書籍に作者の直筆サインが入った「サイン本」というものがある。
こと漫画やイラスト集のサイン本には、直筆のサインに加えて直筆のイラストが描かれる場合もあり、ファンにとっては入手出来たらこの上なく嬉しいものだ。

漫画のサイン本にサインと共に描かれるイラストというのは、大抵の場合、その漫画に登場するキャラクターのイラストだと思う。
逆に他に何があるのか、その漫画のキャラクター以外をサイン本に描く漫画家がいるのか、と思う方もいるかもしれないが、それがいるのだ。
このブログで何度か名前を出してきた私の大好きな漫画家兼コラムニスト、カレー沢薫先生だ。


最近コラムニストとしての仕事も増えエッセイの単行本を何冊か出版しているカレー沢先生。
その発売に合わせてカレー沢先生がサイン本を描いてくれ、書店に数量限定で置かれることがある。

コラムニストのエッセイのサイン本にイラストが入るというのも改めて考えれば面白いことなのだが、コラムニストとして活躍されるより漫画家としてのデビューが先で漫画の単行本にもイラスト入りサインを書いてきた先生なので、エッセイのサイン本も同様にイラストを入れてくれている。
エッセイの単行本に入れるイラストとなると、漫画と異なり登場キャラクターがいるわけではないので何を描くのかという話にはなるが、その前にカレー沢先生の漫画のサイン本の話をしておきたい。

そもそもカレー沢先生は、自身の単行本発売に合わせて行われるサイン会で、その作品のキャラクター以外のリクエストも受けてくれる漫画家だった。


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自身の作品のキャラ以外のリクエストも受け付ける発想は一体どこから……と思うが、ツイートにもある通り「私も流行りのキャラ書きたいし」という先生の気持ちもあって成り立ったものだろう。
(流行りのキャラのリクエストが来るとは限らないと思うが)
私はそこまでの最古参ではないので先生の初めてのサイン会当時はまだファンではなかったが、遡れば最初のサイン会からそういう空気はあったと言う。


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かく言う私もサイン会でカレー沢先生の作品と全く関係ないリクエストをしたことがある。
それが許されるのが、カレー沢先生のサイン会なのだ。


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※映画『KING OF PRISM by PrettyRhythm』に出てくる大和アレクサンダーというキャラクター。
※今までの記事で引用してきた自身のツイートのアカウントと異なるが、二次元用と三次元用で使い分けているだけでどちらも本人のアカウント。(三森乃沙は本名ではない)


そんなカレー沢先生なので、エッセイの単行本発売に際してサイン本を描くという時にリクエストを募集すると言い出しても頷けた。
と言っても、最初のうちはそんなに大々的にリクエスト募集を掲げていたわけではない。
それは先生の軽い呼びかけから始まった。


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そもそも描いていた長谷部*1と土方さん*2自体、先生の作品のキャラではないので、何でもござれという感覚だったのかもしれない。


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購入したサイン本に描いてあるのは、長谷部か、土方さんか、はたまた他人のリクエストか。
サインガチャという概念の誕生である。
実態のないソシャゲのガチャと対比して、先生はここでは「リアルガチャ」と呼んでいた。

その後また別のエッセイ発売に際して、カレー沢先生にサイン本の依頼が来た。
今度はさも当たり前のように最初からリクエストの募集をかけるカレー沢先生。


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前回のサインガチャは100冊のうち8割が長谷部か土方さんということで、他人のリクエストイラストは残りの2割だった。
今回は110冊のうち100冊がリクエストイラストと、9割を超えた。

そして、サイン本を描き終えると、サイン本の依頼が来る。


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ついに他人のリクエストのサイン本が10割となる。
さらには、サイン本の依頼の内容にまで変化が表れる。


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サイン本を置く書店の公式Twitterまで「サイン本ガチャ、開始します( ´ ▽ ` )ノ」などと言い出す始末。


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かくしてサインガチャという文化が確立されていった。


と、ここまでなら、リクエストを募って自分の作品以外のキャラをサイン本に描く変な漫画家がいる、というネタで終わるが、この話はまだ終わらない。
むしろここからが本題だ。
ここまではサインガチャに馴染みのない人にサインガチャとは何かを説明したにすぎず、その本当の凄さには触れていない。


サインガチャは引いただけーー本を購入したでは終わらない。
ソシャゲをやったことがある人なら、ソシャゲのガチャで引いたキャラをSNSにあげた経験がある人も多いと思う。
サインガチャも、同様だ。

サインガチャでない普通の書店販売サイン本の場合でも、サイン本が買えた!と喜びのツイートをする人はいると思う。
中には、サイン本は世界に1冊しかない自分のためだけの直筆イラストということで、SNSにあげたりせず自分だけで楽しむ奥ゆかしい人もいるかもしれないが、そんな人ばかりでもないだろう。


ところがサインガチャのサイン本のイラストをSNSにアップすることは、ソシャゲのガチャ結果をSNSにアップすることとも、普通のサイン本のイラストをSNSにアップすることとも、また違う意味を持つ。

サインガチャのサイン本を入手した人がSNSに画像をアップする時、その投稿の内容の主な傾向として、次の2つが見受けられる。

①サインガチャで引いたキャラが何のキャラかわからないので教えてほしい。

②サインガチャでこんなキャラを引いたのでリクエストした人に届いてほしい。


①の方は特に、サインガチャだからこそというところで、普通のサイン本では起こりえないことだと思う。
「○○のサイン本買ったらこんなキャラが描かれてたんですが、これ何ていうキャラですか?」なんてSNSにアップしようものなら炎上案件だ。
ファンじゃない癖にサイン本を買ったのかと叩かれそうだし、そもそもサイン本があるのだからそれを読めばそのキャラが出てくるだろ、といったツッコミもされそうだ。

しかしカレー沢先生のサインガチャなら許される。
サインイラストの描かれたエッセイをいくら読もうと、そのイラストが何のキャラかという答えは出てこない。
(カレー沢先生のエッセイの中には二次元のキャラの話題も登場するので可能性はゼロではないかもしれないが)
自分が買ったサイン本に描かれているキャラが誰なのか聞くことは、恥ずべきことでも何でもないのだ。


②については、サインガチャでない普通のサイン本でも、このキャラが好きな人に届けばという気持ちでSNSにあげることはあるかもしれない。
しかしサインガチャに関しては、そんなふわっとした不特定多数への共有などではなく、絶対にリクエストをした特定の人がいるのだ。
サインガチャの仕組みは、リクエストしたところで基本的に自分のリクエストが他の人の元に行くだけだ。
(自分で購入して自分のリクエストを引き当てた、という例はまだ聞かないように思う)*3
しかし、購入者がSNSにあげてくれることで、自分がリクエストしたイラストを見ることが叶う場合がある。
まさにインターネットの発展の恩恵だと言える。


①の投稿に対して、通りすがりのファンが「○○の△△というキャラだと思います」とリプしたり、リクエストした本人が「私がリクエストした○○の△△というキャラです!写メ載せてくれてありがとうございます!」とリプしたりする。
①と②の合わせ技で、「何のキャラかわかりませんが、リクエストした方に届きますように!」という投稿がなされたりもする。
何のキャラか購入者が特定出来ていても、②を目的として「ガチャ結果○○の△△でした!リクエストした方に届け!」と投稿したりする。
あまりにも優しい世界過ぎやしないか。


この流れはサインガチャの主催たるカレー沢先生が主導したというわけではない。
サイン本購入者が自主的にSNSに投稿していたところから生まれた流れだ。
画像を投稿する際にファンのつけるタグが「サイン本ガチャ」だったり「サインガチャ」だったりとぶれていた為に統制をはかってほしい旨の声があり、それを受けたカレー沢先生のツイートはあったが、購入後の流れに関して先生の関与はそれくらいだ。


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カレー沢先生はただひたすら、自分の作品でもないリクエストのサイン本を何百冊と描いていただけだ。


・サイン本に描くイラストのリクエストを受付(ジャンル二次元三次元不問)
・誰かがリクエストしたイラストの描かれたサイン本が書店に並ぶ
・購入者が「何のイラストか教えてほしい」「リクエストした人に届いてほしい」の意を込めて自主的にサインイラストの画像をツイート
クラスタが「○○だと思います」「私のリクエストしたキャラですありがとう」とのリプライ

このサインガチャの流れを確立させたカレー沢先生は本当に凄いと思う。
これは真似ようと思っても他の漫画家が簡単に出来ることではないと思う。

まず自分の漫画のサイン本に自分の作品のキャラ以外を描く漫画家などそういないと思う。
というより、漫画家が「新刊のサイン本のイラスト、リクエスト受けたものを描こうと思います。自分の作品以外のキャラでも、実在する人でも食べ物でも何でもありで」とか言い出したら、カレー沢先生以外のまともな担当編集者は止めに入るのではないかという気がする。
そう考えるとカレー沢先生の担当がサイコパスだったからこそ成り立ったサインガチャだったと言えるかもしれない。


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ちなみにカレー沢先生のサイン本イラストについてはtogetterでまとめられている方がいるので、興味が湧いたら是非観てほしい。
カレー沢タッチで描かれるあらゆる人の推しが詰まっている。

togetter.com


ところで今日11月22日は何の日かというと、実はカレー沢先生の誕生日だ。
(と書いてこの記事を締める予定だったのだが、間に合わず11月23日になってしまった)


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無病息災を祈って1冊、という方は是非下のリンクからどうぞ。
(何度でも言うが、このブログ経由で物が売れても私には1円も入りません。)

カレー沢先生、お誕生日おめでとうございます!

猥談ひとり旅

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女って何だ?

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カレー沢薫の廃人日記 オタク沼地獄

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やらない理由

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*1:刀剣乱舞』のへし切り長谷部。カレー沢先生の推し。

*2:Fate /Grand Order』の土方歳三。カレー沢先生の推し。

*3:2018.12.2追記 最近発売された『猥談ひとり旅』のサイン本では、購入したサイン本のイラストが自分のリクエストしたものだったという例が確認されている。それがわかるのも、SNSあってのことである。